武満徹作曲賞

2024年度 武満徹作曲賞 ファイナリスト決定(審査員:マーク=アンソニー・ターネジ)

2023.12.1

1997年に始まったオーケストラ作品の作曲コンクール「武満徹作曲賞」は、毎年ただ1人の作曲家が審査にあたります。
26回目(2005年と2006年は休止)となる2024年度(2023年9月29日受付締切)は、104の応募作品から、規定に合致した、27ヶ国(出身国・出身地域)102作品が正式に受理されました。そして2024年度審査員マーク=アンソニー・ターネジによる譜面審査の結果、下記4名がファイナリストに選ばれました。

国籍別応募状況(PDF/126KB)

2024年度審査員 マーク=アンソニー・ターネジ (イギリス) Mark-Anthony Turnage (United Kingdom)
©James Bellorini

この4名の作品は2024年5月26日[日]の本選演奏会にて上演され、受賞作が決定されます。
なお、譜面審査に際しては、作曲者名等の情報は伏せ、作品タイトルのみ記載されたスコアを使用しました。

ファイナリスト(エントリー順)

ジンユー・チェン(香港) Jingyu Chen

[作品名]

星雲

Nebula for symphony orchestra

1994年、広東省生まれ。英国在住の作曲家。ロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックで学士号、ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックとケンブリッジ大学で修士号を取得し、現在はケンブリッジ大学で博士課程に在籍している。BBCシンガーズ、バーミンガム現代音楽グループ、RCMオーケストラ、RNCMブランニュー・オーケストラ、マンチェスター・コンテンポラリー・ユース・オペラ、アマティス・トリオなどのアンサンブルやアーティストと共演。作品は、ニューミュージック・ノースウエスト・フェスティバル、マンチェスター・サイエンス・フェスティバル、8³ニューミュージック&サイエンスなどのフェスティバルで演奏されている。第3回国際作曲家コンクール「ニューミュージック・ジェネレーション」(2021年)、ホマートン作曲コンクール(2022年)、UK国際音楽コンクール(2023年)などで入賞している。
https://www.jingyuchen.com

©Jedrek Koh

ホセ・ルイス・ヴァルディヴィア・アリアス(スペイン) Jose Luis Valdivia Arias

[作品名]

Al-Zahra ─ オーケストラのための3つの小品

Al-Zahra - Three pieces for orchestra

1994年、グラナダ生まれ。2023年タングルウッド・ミュージック・センターのフェロー作曲家、2023/24年スペイン・ミュージック・ユース・レジデント・コンポーザー、2022年欧州文化首都委嘱作曲家。2022年Ink Still Wetのワークショップに参加、2022年第33回SGAE-CNDMヤング・コンポーザー・スペイン賞第1位、カザフ国立芸術大学第3回オーケストラのための国際作曲家コンクール「ニューミュージック・ジェネレーション」第2位。彼の音楽は、ルクセンブルクのユナイテッド・インストゥルメンツ・オブ・ルシリン、オーストリアのトーンキュンストラー・オーケストラ、オランダのドーレン・アンサンブルなどで演奏されている。
https://joseluisvaldiviaarias.com

©Vanessa Menendez

アレサンドロ・アダモ(イタリア) Alessandro Adamo

[作品名]

括弧

Parenthesis 

1995年、カンポバッソ生まれ。14歳からカンポバッソ音楽院で学び始め、2018年にクラシック打楽器科を、2023年に作曲科を卒業。第9回国際オンライン・ジャン・シベリウス・フェスト作曲コンクール(フィンランド・トゥルク)学生部門第1位、マエストロズ・ヴィジョン・アワーズ国際作曲コンクール(中国・北京)ヤングアーティスト部門第4位、カルロ・サンヴィターレ国際作曲コンクール(イタリア・オルトナ)第3位など、ここ数年、さまざまな作曲コンクールで受賞。2020年から現在まで、カンポバッソのアミーチ・デッラ・ムジカ(イタリア)、パドヴァのアミーチ・デッラ・ムジカ(イタリア)、エヴァン・エリクソン・ミュージック2023・コール・フォー・スコアズ(アメリカ・メンフィス)から、室内アンサンブルと独奏楽器のための作品を委嘱されている。

ジョヴァンニ・リグオリ(イタリア) Giovanni Liguori

[作品名]

ヒュプノス ─ 夢の回想

Hypnos - Reminiscenze oniriche per grande orchestra

1989年、カーヴァ・デ・ティッレーニ生まれ。サレルノ音楽院でクラリネット科、吹奏楽科、作曲科を首席で卒業。作曲をジャンカルロ・トゥラッチョ、トリスタン・ミュライユ、ヘルムート・ラッヘンマンの元で学んだ。彼の作品は、イタリア・リリック・アンサンブル、サレルノ・シンフォニエッタ・ソロイスツ、フィラデルフィアのドレクセル・コンサート・バンドで定期的に演奏され、ドレクセル・コンサート・バンドによって《Iberian Rhapsody》が録音された。また、Ad est dell'equatoreよりCD『Metamorfosi in Fuga』をリリース。イタリアとアメリカの様々なオーケストラや室内楽団で活躍している。現在、ヴィボ・ヴァレンツィア音楽院で室内楽を教える。

「2024年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」  
審査員:マーク=アンソニー・ターネジ

【総評】

審査にあたって私が作品に求めたのは、明瞭さと多彩さであり、音楽的なジェスチャーに頼らない作品であった。
応募作品の中には、単一のシンプルなアイディアに焦点をあて、最後までそれを貫くような曲が何作かあることを期待していた。オーケストラ作品は、かならずしも巨大な音の塊とは限らない。大編成のオーケストラが使えるからといって、奏者全員がつねに演奏すべきということではない。息抜き、そして戦略的な計画が必要である。すべてのテッシトゥーラ(音域)を使い、オーケストラのほぼ全奏者が持続的に演奏しているようなスコアは退屈だ。そうならないようにするには、勇気 ── そしておそらく経験 ── が必要だが、若い作曲家たちの多くは自作を聴く機会があまりないために、そうした方向に進めないでいる。
最終的に私が選んだ4作品は、テクスチュアに頼ることもなく、駆け上がったり駆け下りたりする音階の続くセクションやハーモニクスばかりの長いパッセージを多用することもなく、よりリズム面でのおもしろさがあった。それら4作にも込み入ったアイディアはあるが、密度の高い状態がずっと続くことはなく、持続的な音の壁以上のものがある。すなわち、密度を緩和させる軽やかさや風通しの良さがある。私が作品に求めたのは透明性、そして思考の明瞭さであった。
英語に「Variety is the spice of life(いろいろあってこそ人生はおもしろい)」ということわざがあるが、本選演奏会で奏される4つの候補作がそのことを証明してくれることを願っている。


マーク=アンソニー・ターネジ
(訳:後藤菜穂子)


◎本選演奏会情報

2024年5月26日[日]15:00
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

コンポージアム2024
「2024年度武満徹作曲賞本選演奏会」

審査員:マーク=アンソニー・ターネジ
指揮:杉山洋一
東京フィルハーモニー交響楽団

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