「エレメント」構造デザイナー セシル・バルモンドの世界

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展覧会について

section2 成長し続ける建築 しくみそのものをデザインする

建築にとって、構造とは建物全体を支える骨であり、地震などの衝撃を分散して逃がす筋肉のようなものです。従来の構造設計では、設計された建物の必要な部分に骨や筋肉をつけて建物に強度を与えることが目的です。しかしバルモンドの構造デザインは、こうした骨や筋肉のネットワーク自体にリズムを与えて建物全体に運動エネルギーのみなぎりを与え、動かないはずの建築に流動性、柔軟性をもたらそうとします。しかしどうやって? バルモンドはその答えを自然界に見出します。

自然界の植物や動物は遺伝子に組み込まれたリズムに従って、周囲の環境など外的な要因の影響も受けながらふたつと同じもののない形へと成長を続けます。バルモンドは建築も同じようにできないだろうか、と考えます。 水平・垂直の決まりきった柱や梁で構成された四角四面の建築ではなく、自然のように自ら育っていくような、複雑な要素や条件をおおらかに受けいれる豊かな建築ができないだろうか?

バルモンドは自然の中に隠れた秩序があることに注目し、建築構造に独自の秩序を与えることでこのような建築を可能にしました。バルモンドの仕事とは、ディテイルのデザインではなく、生きた建築を成り立たせるしくみそのもののデザインです。gallery 2では、空間にひろがる《H_edge》《Danzer》など大型の作品によって、バルモンドの考えるしくみを建築的なスケールで紹介し、建築に命を吹き込む手法を空間全体から体感していただきます。

マーシャス 2002
協働:アニッシュ・カプーア
© Denis Gilbert + VIEW

《Danzer(ダンザー)》2009 photo:Alex Fradkin
巨大な立体パズル。注意深くみると、それを構成するのはわずか4種類の四面体で、ひとつずつの四面体はさらにこの4種のミニチュアが入れ子になっていることがわかります。自己相似形を持つかたちは、海岸線や枝分かれする樹木など自然界にあふれています。

《H_edge(ヘッジ)》2009 photo:Alex Fradkin
H型のアルミプレートとチェーンのみで成り立つ立体作品。プレートもチェーンも単独では自立しませんが、規則的に組み合わせることでお互いを支え合い、内にも外にも無限のひろがりをもった迷宮のような空間を作ります。

ウィーヴ・ブリッジ、ペンシルヴェニア 2009
photo: Alex Fradkin


東京オペラシティアートギャラリー
© 2009 Tokyo Opera City Art Gallery