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中嶋彰子(ソプラノ)

2005年11月29日 出演

私があの会場で歌ったのは2005年11月29日です。その時のことは懐かしくよく覚えています。B→Cの意味と企画の意図を何度も尋ねて、過去のアーティストのプログラミングに目を通しているうちに、誰もやったことのない試みをしたいなぁと思いました。
そこで思いついたのが「生と死の宿命」といったテーマ。表現主義の作曲家、シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》から選択した4曲を柱にして、死/詩を歌う。ろうそくや光を使った演出に黒のジャケットにパンツルック。パートナーの松本和将さんには、時にはカウボーイハットをかぶって歌いながら演奏してもらったり、暗闇の中鍵盤が見えない状態で最終曲の最後の5小節を弾いてもらったり…随分凝って、松本さんにも無茶なお願いをしたものです。「迫真の演技力…全てに完璧を期した『大人の舞台』である。」と音楽評論家の白石美雪さんが朝日新聞に書いてくださったことも、とても光栄に覚えています。
B→Cは、12年前歌手として自由に思いっきり舞台表現するチャンスと勇気を与えてくれた貴重な経験でした。おかげさまでその時に初めて演奏したシェーンベルクはずっと研究を深めており、2016年にはスイスのシオン音楽祭で舞台作としてプロデュース、出演を果たすまでに成長しました。これからも若いアーティストたちが、自分なりの想いや考えを発揮できる場として益々輪を広めていくことを心から願っています。