[85]
神尾真由子(ヴァイオリン)

2006年10月24日 出演

085_神尾真由子(ヴァイオリン)

©Shion Isaka

この度は開館20周年、お祝い申し上げます。
B→Cは、バッハ(B)からコンテンポラリー(C)という意味だそうで、全ての出演者がバロックから現代音楽まで披露するシリーズです。東京のような恵まれた大都市では、古典やロマン派、近代音楽は毎日のように素晴らしいレベルの演奏を聴くことができますが、現代音楽は未だに演奏される機会が明らかに少ないのが現状で、このようなシリーズの存在はとても有意義で素晴らしいことだと思います。
このシリーズで演奏したプログラムは、私のキャリアの中で一番挑戦的なものでした。後にも先にも、これほどまでに恐ろしいプログラムを組んだことはありません。J.S.バッハの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番》から始まり、バルトークの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》、池辺晋一郎の映画音楽、イザイの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番》をはさみ、エルンストの《夏の名残のバラ》で終わるという全て無伴奏のプログラムでした。特にバッハとエルンストは舞台での演奏としては難曲中の難曲として有名であり、今思い返しても、あまりの野心的なプログラムに呆れてしまうほどです。池辺晋一郎先生の曲は、以前私が出演した映画の音楽として書かれ、私しか弾いていないものです。演奏家としてこれ程思い入れのあるものはなく、最近ではワシントンD.C.でも演奏させていただき、とてもポジティブなフィードバックをいただきました。
このシリーズの素晴らしいところは、観客の皆さんに現代音楽を、またはよく知られないバロック以前の音楽を紹介することだけでなく、演奏者にとっても時代的に両極にある音楽を演奏することによって新たな発見や挑戦があることだと思います。
私個人としても、演奏できる機会は少ないとはいえ現代音楽は一番興味のある分野ですし、このようなシリーズが今後も続いていき、またさらに発展することを願うばかりです。