メッセージ
ごあいさつ
東京オペラシティ コンサートホールと東京オペラシティ リサイタルホールはおかげさまで本年開館20周年を迎えることができました。
これまで、1,000回を超える主催・共催公演を含め、音楽公演は両ホールの合計で9,000回近くを数えております。天井に大胆な変形ピラミッド型を取り入れたコンサートホールでは、天然木の内装が生み出す明瞭で豊かな音響を、リサイタルホールでは演奏者との一体感に満ちた濃密な空間を多くのお客様に楽しんでいただいて参りました。また、社会環境が変化し嗜好も多様化する中、幸いにも内外から高い評価を頂戴しております。
開館以来、当ホールにお越し下さったお客様、ご利用いただいた出演アーティストや関係の皆様、ご支援いただいた協賛企業様、賛助会員、Arts友の会会員の皆様、音楽面はもちろんのこと様々な局面で日夜当ホールを支えて下さったすべての皆様に心より御礼申し上げます。
東京オペラシティ文化財団は故 武満徹芸術監督が掲げた『未来への窓 Window to the Future』という理想を大切に思い、「武満徹作曲賞」やリサイタルシリーズ「B→C」など新しい才能を発見し育てていくことに力を入れて参りました。この間に特別音楽顧問に就任頂いたケント・ナガノ氏、現在もミュージックディレクターを務めていただいている池辺晋一郎氏はじめ、武満徹氏とゆかりの深い方々からの様々なお力添えは忘れることができません。20周年の節目を迎え、初心を大切にしつつ今後も美しい音の殿堂として、また、音楽を愛する皆様を惹きつけることができる場所として成長していけるよう、財団一丸となって努力して参ります。
引き続き東京オペラシティ コンサートホール、東京オペラシティ リサイタルホールをご愛顧、ご支援賜りますようお願い申し上げます。
2017年4月
公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
理事長 武田嘉和
「20年……そして、これから」
撮影:武藤章
東京オペラシティ コンサートホールが、開館20年。昨年は武満徹さんの没後20年だった。たった1年……たった1年の差なのだ……。もう1年生きていてくださったら、東京オペラシティ開館を武満さんは知ることができたのである。ついこの間のことのように、武満さんの逝去と東京オペラシティのオープンを思い起こすのである。
しかしこの20年、東京オペラシティは武満さんの遺志を継ぎつづけてきた。毎年5月末の「コンポージアム」と「武満徹作曲賞」は、その形象化。また、没後10年に際して催されたアートギャラリーでの企画展「武満徹|Visions in Time」(2006)も、その具現のひとつだった。
自主企画「B→C」は、今や完全に若い演奏家たちにとって重要なステイタスである。音楽分野での賞は決して少なくないが、「B→C」は賞ではないのに、いや賞ではなく現代の演奏家としての根本的なポリシーの披瀝と実践の場であるからこそ、高い評価を受けているのだろう。
好評を博した主催企画も数多い。ジャズピアノ・山下洋輔を核とするコンサート、つい先日亡くなったスクロヴァチェフスキ率いるザールブリュッケン放送響によるブルックナー等々、長く記憶に残るすばらしいコンサートがいくつも脳裏に蘇る。
また、会場提供の視座でも、国内各オーケストラ公演、日本音楽コンクール本選会など、東京オペラシティでの開催が当然になっているものは少なくない。毎年夏前の「N響 Music Tomorrow」も、そのひとつだ。
しばらく前のデータだが、音楽ホール人気度調査で東京オペラシティは、サントリーホールに次いで2位であった。新国立劇場に隣接して、またたく間に初台の地の文化を創成し、育て上げたと言って過言でない。先日、現在N響首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィに、日本はなぜこれほどにもすばらしいホールがたくさんあるのかと尋ねられ、しかし大切なのはソフトだと、僕は答えた。音楽ホールとギャラリー……ミュージック・ディレクターを務める者として僕は、真の文化の牽引者としての東京オペラシティのこれからの歩みを、ひきつづき心から信じている。
池辺晋一郎
(作曲家/東京オペラシティ文化財団ミュージック・ディレクター)