現代イギリスをリードする作曲家にして指揮者です。1952年グラスゴー(イギリス)生まれ。父親はロンドン交響楽団のコントラバス奏者です。15歳の時にロンドン交響楽団の演奏会にて自作の《交響曲第1番》を指揮するなど、早くからその才能を発揮し、大作曲家ブリテンからも将来を嘱望されました。故・武満徹もナッセンを「表現される音楽の内実と結びついた、無駄のないオーケストラ書法を持つ、得難い作曲家のひとり」と高く評価していました。
身長190cmを超える堂々たる体躯ながら、繊細で純真な感性と、常に周囲への気配りを忘れない優しさの持ち主。さらに卓越した企画力と指導力で人望を集め、1983年から98年までオールドバラ音楽祭の芸術監督を、また1986年から98年までタングルウッド音楽祭のコンテンポラリー・ミュージック・アクティヴィティーズのコーディネーターなど、数々の要職もつとめました。現在は、世界的な現代音楽アンサンブル、ロンドン・シンフォニエッタの音楽監督をつとめています。
代表作は、《交響曲第3番》(1979)、絵本作家のモーリス・センダックと共同制作したオペラ《かいじゅうたちのいるところ》(1983)、室内楽では《声なき歌》(1991-92)などで、作品数は決して多くありませんが、どの曲も完成度が高く、難解さのない豊かで美しいサウンドは、現代の作曲家たちの中にあって異彩を放っています。サイモン・ラトル、エサ=ペッカ・サロネン、M.ティルソン=トーマスら、第一線の指揮者たちもナッセンの作品を好み、しばしば演奏しています。
指揮・レコーディング活動も活発で、ロンドン・シンフォニエッタ、BBC交響楽団、シェーンベルク・アンサンブルをはじめ各地の著名オーケストラ、アンサンブルを指揮し、これまでに200以上の作品の初演を行っています。ホロウェイ作曲《管弦楽のための協奏曲》のCDが1994年グラモフォン・アウォード(現代音楽部門)を、またエリオット・カーター作品集CDが2000年の同賞を受賞しました。日本では、1994年に、サントリーホール国際作曲委嘱シリーズのために書かれた《ホルン協奏曲》を自らの指揮で初演(ホルン独奏:バリー・タックウェル、NHK交響楽団)。また、1997年東京オペラシティコンサートホール・オープニングシリーズでは、《祈りの鐘 素描》がピーター・ゼルキンのピアノ独奏で初演されたほか、NHK交響楽団、アスコ・アンサンブル&シェーンベルク・アンサンブルを指揮し、2つのコンサートを行いました。2000年11月には、NHK交響楽団定期演奏会を指揮しました。彼の秀逸な選曲と見事な指揮ぶりは常に評判を呼んでいます。 |