1947年フランス・ノルマンディー地方の港町ル・アーヴル生まれ。国立東洋言語学校で古典アラビア語及びマグレブ系アラビア語の学位を修得する一方で、パリ政治学院にて経済学の学位を修得。1967年パリ国立高等音楽院に入学。オリヴィエ・メシアンのクラスに在籍し、1971年作曲を首席で卒業。同年ローマ大賞を受賞し、ローマのメディチ荘で2年間過ごす。これらの時期に電子音響音楽やイアニス・クセナキス、ジャチント・シェルシ、ジェルジ・リゲティの音楽に影響を受けた。
1973年パリに戻り、ジェラール・グリゼー、ミカエル・レヴィナスらとともに音楽グループ「イティネレール」を結成。当時主流だったセリー音楽に異を唱え、特に音のスペクトル分析に基づく作曲技法を確立、《諸大陸の漂流》(1973)、《マゼランの雲》(1973)、《記憶/浸食》(1975-76)、そして管弦楽曲《ゴンドワナ》(1980)など独特の音響推移を見せる音楽が注目を集め、「スペクトル音楽」の先駆者の一人と呼ばれるようになる。1980年、IRCAM(国立音響音楽研究所)に参加。コンピュータで音響合成したテープによる《デザンテグラシオン》(1982)や、大アンサンブルのための《セレンディーブ》(1991-92)、管弦楽曲《流体の力学》(1990-91)、室内楽曲《神秘的な小舟》(1993)はこの時期の代表的な作品である。1991年から97年までIRCAMで作曲を教える傍ら、作曲支援ソフト「パッチワーク」のプログラム開発に携わった。また同時に、ダルムシュタット夏期現代音楽講習会をはじめとする多くの音楽祭や研究所でも講師をつとめた。
オンド・マルトノをはじめとする鍵盤楽器奏者としても著名であり、ピアノ曲《ラ・マンドラゴール》(1993)、オンド・マルトノ協奏曲《空間の流れ》(1979)などの作品も知られている。最近では、2008年8〜9月にはサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルによるメシアン《トゥーランガリラ交響曲》の演奏会とツアーにオンド・マルトノ独奏者として参加した(ピアノ独奏者はピエール=ロラン・エマール)。
2009年2月7日には、ロンドン・バービカンにおけるBBC交響楽団「Total Immersion」シリーズのテーマ作曲家として、多数の作品が集中上演され、話題を集めた。
現在、ニューヨークのコロンビア大学作曲科教授。
最近の日本では、漫画『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子 著)において、主人公がミュライユのピアノ曲《ラ・マンドラゴール》を練習するシーンが描かれたことで、現代音楽ファン以外にもその名が知られるようになった。
Tristan Murail オフィシャルサイト(フランス語/英語)
http://www.tristanmurail.com/
Ichiro Nodaira, conductor
ピアニスト/作曲家/指揮者。1953年生まれ。東京藝術大学、パリ国立高等音楽院に学ぶ。1982〜1990年、アンサンブル・イティネレールのピアニスト。
1994〜2000年、東京シンフォニエッタ代表。作曲家としては、フランス文化庁をはじめ、IRCAM、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、ベルリン・ドイツ交響楽団などから数多くの委嘱を受け、2005年にはシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン音楽祭(ドイツ)でオペラ『マドルガーダ』がケント・ナガノ指揮により初演されるなど、めざましい活躍を続けている。2007年、バッハ「平均律クラヴィア曲集」をピアノ、チェンバロ、オルガンを用いて全曲録音。同年3月ロサンゼルスのMonday Evening Concerts シリーズに指揮者、作曲家、ピアニストとして登場。また、8月にはザルツブルク・モーツァルテウムのレジデンス・コンポーザーとして招かれた。近年は指揮者としても活躍している。第13回中島健蔵音楽賞(1995)、第44回尾高賞、第35回サントリー音楽賞(2004)、第55回芸術選奨文部科学大臣賞(2005)などを受賞。現在、静岡音楽館AOI芸術監督、東京藝術大学准教授。
Takashi Harada, ondes Martenot
世界中のオーケストラとの共演やフェスティヴァルを飛び回る原田節は、慶應大学卒業後渡仏、パリ国立高等音楽院オンド・マルトノ科を首席卒業、故ジャンヌ・ロリオ女史の下で研鑚を積んだ。現代音楽界での先進的な創作とともに、映画やテレビ、アニメやプレステ2に至るボーダーレスで一つの定義には収まりきらない活動は、第一人者の演奏家という評価のみならず、独自の哲学に裏打ちされた多様多彩な作品群の豊かさにより、作曲家としての地位もすでに確固たるものにしている。出光音楽賞、横浜文化奨励賞、ミュージック・ペンクラブ賞など受賞も多数。また、メシアン「トゥーランガリラ交響曲」は、オンド・マルトノが主役として出てくる代表的な曲であり、この楽器を用いる曲としては最も演奏頻度の高い曲である。この楽曲においてメシアン・イヤーである2008年は、ベルリン・ドイツ交響楽団、ソウル・フィルハーモニックオーケストラ、NHK交響楽団、九州交響楽団、PMFオーケストラ、リヨン国立歌劇場管弦楽団、ボストン交響楽団と共演。これまでに演奏回数は、20カ国、200回以上に及んでいる。
Takeshi Ooi, conductor
1974年生まれ。東京藝術大学指揮科および同大学院音楽研究科指揮専攻修了。2002年、『ペレアスとメリザンド』(ドビュッシー)を指揮してオペラ指揮者としてデビュー。2003年には『不思議の国のアリス』(木下牧子)の初演を指揮した。近年は新国立劇場バレエ団公演『カルメン』『くるみ割り人形』を指揮するなど活動の幅を広げている。昨年のコンポージアム2009「ヘルムート・ラッヘンマン オーケストラ作品展」では副指揮者を務めた。2007年9月から2009年3月までチェコ・フィルハーモニー管弦楽団にて研修。2008年、第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール第2位。現在、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉常任指揮者、山形交響楽団指揮者。
New Japan Philharmonic
1972年、指揮者・小澤征爾のもと楽員による自主運営のオーケストラとして創立。97年より墨田区・すみだトリフォニーホールを本拠地とし定期演奏会などを行う他、地域に根ざした演奏活動も特徴的。2004年より始めた“新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ”(音楽監督:久石譲)、「室内楽シリーズ」の評価・人気も高い。映画『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』では管弦楽を担当。03年よりクリスティアン・アルミンクが音楽監督に就任。06年『火刑台上のジャンヌ・ダルク』で第3回三菱信託音楽賞奨励賞受賞。09年2月、「ハイドン・プロジェクト」(指揮:F.ブリュッヘン)を開催、絶賛を博す。20010-11シーズンよりダニエル・ハーディングが指揮者陣に加入。メディアでは「日本のオーケストラ新御三家の一つ」として紹介されている。
Tokyo Philharmonic Orchestra
1911年創立。2001年に新星日本交響楽団と合併し、日本で初めてシンフォニーオーケストラと劇場オーケストラの両機能を併せ持つオーケストラとなる。2010年4月より、ベルリン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場をはじめとする世界の楽壇で活躍するダン・エッティンガーを常任指揮者に迎える。自主公演の他、新国立劇場などでのオペラ・バレエ演奏、NHK他の放送演奏など、高水準の演奏活動を展開。海外公演も積極的に行い、特に2005年11月のチョン・ミョンフン指揮による「日中韓未来へのフレンドシップツアー」では、中国、韓国で7公演を実施し、各地で絶賛を博し「世界のファーストクラス・オーケストラ」を強く印象づけた。オーチャードホールとフランチャイズ契約を結び、文京区、千葉市、和光市、軽井沢町と事業提携している。