昭和に入って登場した新たなメディア─1925年に開始されたラジオ放送、大正半ばから一般に普及し始めたレコード、昭和初期に姿を現したトーキー映画─は、昭和の音楽を彩ります。欧米の有名演奏家によるレコードに耳を澄ますクラシック・ファンが生まれ、映画の主題歌がレコードに吹き込まれて流行するようになりました。しかし軍靴の音が次第に近づき1931年の満州事変以降、日本は戦争の時代を迎えます。
政府奨励による「愛国歌」や軍国歌謡ばかりでなく、健全な家庭でうたえる流行歌を企図して作られた放送番組「国民歌謡」なども含めて、戦時に向けて国民のモラルを作り替えようと、音楽は戦時色に染め上げられていきました。