大阪市平野区にあるアトリエ インカーブは、社会福祉法人 素王会(そおうかい)のアートスタジオ兼事業本部として2002年に設立され、知的に障がいのあるアーティストたちの創作活動の環境を整え、彼らが作家として独立することを支援してきました。所属するアーティストは現在では28名を数え、そのユニークな活動は国内外で大きな注目を集めています。
今回はそのなかから、寺尾勝広、新木友行、湯元光男の3人に焦点を絞って、近作を中心に作品をご紹介します。父親の鉄工所で溶接工として20年間働いたのちに制作活動を始めた寺尾勝広(1960 - )のモティーフはすべて鉄です。本人が「図面」と呼ぶ緻密なドローイングには、鉄骨をあらわす直線と溶接の目印をあらわす記号がひしめいています。格闘技好きの新木友行(1982 - )は、ボクサーやプロレスラーを作品に描きます。隆々とした筋肉の動き、互いの体が組み合う様子を、的確な線描と鮮やかな色彩によって捉え、大胆にデフォルメされた表現は躍動感に満ちています。湯元光男(1978 - )は、建物、船、虫や鳥などのモティーフを繰り返し描きます。色鉛筆で丁寧に彩られた色面は、色鮮やかさと同時に、どこかノスタルジックで心温まる雰囲気を醸し出しながら、不思議な世界を構築しています。
作品の特徴は三者三様ですが、共通するのは、型にはまらない、自由なものの見方、発想、表現という点です。ひたむきに制作に没頭して生み出された彼らの"生"の結晶ともいえる、個性豊かな、独創性にあふれる作品は、アートの奥深さや魅力を私たちにあらためて気づかせてくれるに違いありません。