「朝起きたときから夜寝るまで全部がシャッターを押す範囲」 ─ 梅佳代
なにげない日常のなかに潜んでいるさまざまな光景を独自の視点から切り取ってみせる写真家・梅佳代。天性のコミュニケーション能力と絶妙の距離感、そして動物的ともいえる動体視力を武器に、梅佳代は果敢にシャッターを切ります。ありそうでありえない光景、笑いと驚き、そしてほんのすこし怖さをはらんだ瞬間まで、梅佳代が見せる世界は、かつてないユニークさでわたしたちの眼を惹きつけます。その作品は、写真は「ホントがそのまま写っている」という素朴かつ根源的な写真観に支えられ、また対象への深い共感と批評的な距離を内在させています。その鮮烈なイメージは、写真家本人の飾らぬ人柄と権威にとらわれないアナーキーな言動とあいまって、写真界に新風を吹き込み、幅広い層の人々の支持を集めています。
〈能登〉より 2009年 © KAYO UME
本展覧会は、いま若手のなかで最も熱く、幅広い視線を浴びる写真家・梅佳代の美術館における初の個展です。写真家の代表的なシリーズを網羅し、数々の未発表作をまじえて大胆に再構成した作品約570点で、梅佳代の全貌をはじめて明らかにします。展示は東京オペラシティ アートギャラリーの巨大空間の特性にあわせ、ときにダイナミックに、ときに親密に展開し、梅佳代の写真表現の多様性とそれらを貫く今日性を浮かびあがらせます。
〈うめめ〉より 2003年 © KAYO UME