展覧会について
Exhibition
1. コレクター片山正通
インテリアデザイナーとして世界的に脚光を浴びる片山正通ですが、多くのクライアントが驚くのは、時には矛盾した要素を含む要求が、高次元でかたちになり実現することです。常に「今までにないもの」を求められる片山の仕事は、クライアントの最大の理解者になることであり、プロジェクトに関わる全ての人、その「場」にこれから集まる人々を想像するというかたちのないマインドを的確にデザイン(設計)することから始まります。インテリアデザイナーの概念から大きくはみ出す片山のクリエイティヴィティは、建築デザイン、クリエイティヴディレクション、ディスプレイなど大小にかかわらず全てにおいて緻密に目を配る、妥協のない姿勢からもうかがえます。デザインを柔軟なツールとして駆使しながら発想を飛躍させ、異なるものを接続する手法は、実はユニークなコレクターとしての側面にも見ることができます。
膨大なコレクションは、片山が手がける仕事の幅と同様に、さまざまなジャンルや時代のものが対象となっています。書籍、CD、動物の剥製、骨董、家具、多肉植物などから現代アートまで、多種多様なコレクションに向けられた好奇心や審美眼を通じて、片山のクリエイティヴィティの本質を探ることができるでしょう。
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ライアン・ガンダー
《Rietveld reconstruction - Ejiro》
2007
photo: Keizo Kioku -
エイドリアン・ゲーニー
《THE COLLECTOR 4》
2009
© Adrian Ghenie
Courtesy of Galeria Plan B
photo : The Artist -
五木田智央
《雑多な情動》
2008
© Tomoo Gokita -
河原温
《“Friday” JULY 14, 2000 “TODAY” series No.26》
2000
photo : Kei Okano
2. コンセプチュアルアートに惹かれる理由
片山の現代アートのコレクションには、コンセプチュアルアートやその流れを汲んだ作品が少なくありません。コンセプチュアルアートの代名詞ともいえる河原温の〈日付絵画〉を筆頭に、ライアン・ガンダー、サイモン・フジワラなど、21世紀の今日にコンセプチュアルな作品を発表する作家たちの作品が含まれています。
片山が率いるワンダーウォールは、コンセプトを具現化する際の自由な発想と、伝統や様式に敬意を払いつつ現代的要素を巧みに取り込むバランス感覚が高く評価されています。片山のコンセプチュアルアートへの関心はそうしたクリエイティヴィティのあり方と深く通じているのかもしれません。
3. 片山的「驚異の部屋*」展示構成
この展覧会の最大の見どころは、片山が自身のコレクションを東京オペラシティアートギャラリーの展示室にいかにディスプレイするかという点です。目に映るものすべてが「素材」であり「刺激」となる片山にとって、病的とも言えるほどの探究心の集積であるコレクションは、必ずしも系統的に集められたものではありません。本展では、片山自身がそれらを分類・編集し、アートギャラリーの空間に構成していきます。美術館の展示というよりも、まるで街でショッピングをしているかのような「わくわくする場」を創造する、美術館にとっても初の試みとなるものです。デザイナーとしての仕事と私的なコレクションが、どのように結びつくのか。「公」と「私」が交錯する場で、あらゆる可能性を見つけだす片山の卓越したクリエイションを体験していただけることでしょう。
*「驚異の部屋」ドイツ語でWunderkammer(ヴンダーカンマー)。15〜18世紀にヨーロッパで作られていた様々な珍品を集めた陳列室。
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KAWS
《Untitled (MBFB7)》
2014
© KAWS
photo : Farzad Owang -
ジャン・プルーヴェ
《Standard Desk 》
1941 -
作者不詳
《聖人像》
18世紀後半
photo : Kei Okano -
《山口一郎 旧個人蔵のリッケンバッカー》
photo : Kei Okano
4. on goingな百科全書 ─ 展覧会名について
展覧会名の「百科全書」は、著名な学者だけでなく、当時無名の執筆者が多く携わり、20年以上かけて編纂されたというフランスの百科全書からとられており、そのまま片山のコレクションの成り立ちを象徴しています。新たなオブジェクトが見つかるたびに、項目が増え、複雑な関連性が生まれる片山オリジナルの百科全書は、決して体系的でも学術的でもありません。会場では、「人と動物」「モノクロ写真」「コンセプチュアルアート」など、独自の分類でコレクションが展開していきます。会場を余すところなく使った、片山の思考の迷宮をご覧いただけることでしょう。