荒木経惟は、1960年代から今日まで第一線で活躍を続け、日本を代表する写真家の一人として世界的に高い評価を得ています。
本展は、今年77歳を迎え、一層活発な活動を続ける荒木が本展に向けて制作した1000点を超える新作を中心に、荒木の制作の原点とも言える1960年代のスクラップブックなどもまじえながら、その多面的な活動を紹介します。
「写狂老人A」のタイトルは、老境に入り一層精力的に制作を続けた江戸時代の絵師・葛飾北斎が70代半ばで「画狂老人卍」と号したことになぞらえ、荒木自身を表しています。荒木の制作活動からは、北斎と同様の、生涯を通じてあくなき探究を続け、道を究めようとする者に共通する人並みはずれたエネルギーが、時代やジャンルの違いを超えて伝わってきます。2017年現在、既に500冊を超える写真集を上梓している荒木は、そのテーマや手法が多岐にわたることでも知られますが、近年、自らの「死」に直面するような数々の体験を経て、「生」を見つめる眼差しは鋭さと深みを増し、長年の重要なテーマである「生と死」がより鮮明に表現されています。荒木経惟の「現在」をいきいきと伝え、その活動の核心に迫ります。