展示構成
Exhibition

宇野の幅広い仕事を、12のトピックでジャンルごとに紹介します。

1. プロローグ 名古屋時代

学生時代に描いたスケッチやクロッキーなど、創作初期の作品を紹介します。宇野は、毎日新聞社主催のデザインコンペで入選を重ね、19歳でグラフィックデザイナーの登竜門だった日本宣伝美術会(日宣美)で入選を果たすなど、早くからデザイナーとしての才能を開花させていました。

2. グラフィックデザイナー 宇野亞喜良

上京後、宇野はグラフィックデザイナーとして華々しい躍進を始めます。和田誠とともに一等を獲得した興和新薬の蛙のイラストレーションや、カルピス食品工業の新聞広告などの貴重な原画を紹介します。

「カルピス広告」原画
1956頃
刈谷市美術館蔵
©︎AQUIRAX

3. 企業広告

宇野は数々の広告制作の現場に携わりました。所属していた日本デザインセンターでは、東芝やトヨタ自動車などの企業広告を担当。旭化成工業「カシミロン」を題材とするポスターは第10回日宣美展で会員賞を受賞しました。また、化粧品会社マックスファクターの広告シリーズも手掛けています。

「スタジオRe」ポスター
1965
©︎AQUIRAX

「マックスファクター(Renaissance Collection)」ポスター
1965頃
刈谷市美術館蔵
©︎AQUIRAX

4. アニメーション映画

1960年代、宇野は『白い祭』、『お前とわたし』、『午砲(ドン)』という3本の短編アニメーション映画を発表しています。本展では、それら3本のアニメ作品を全て上映します。

5. ポスター

宇野は、現在に至るまで膨大な数のポスターを手掛けています。豊富な印刷知識と描写力が存分に発揮された、独特のファンタジーやエレガンス、エロティシズムが漂う宇野らしい世界観を感じられるポスターを一挙に展示します。

「ミケランジェロの言葉」ポスター
1968
©︎AQUIRAX

6. 絵本・児童書

現在までに宇野は、70冊余りの絵本を手掛け、多くの児童書にも携わっています。『どうぶつ えとおはなし』(1957年頃)や『青い鳥』(1957年頃)、横尾忠則と企画した『海の小娘』(1962年)、今江祥智との『あのこ』(1966年)など、愛らしい動物から大人びた少女まで、物語や著作によって自由自在に画法を変え、バリエーション豊かな絵本や児童書を生み出しています。

『あのこ』原画
1966
©︎AQUIRAX

7. 版画集・作品集

1970年代から80年代にかけて、過去の様式を求めるクライアントの仕事に辟易し、制作活動をセーブしていた宇野は、自分の表現スタイルをあらためて見直すための版画集や作品集を出版しました。この頃の作品は、輪郭線を活かしつつ淡く着彩された裸婦像など、リアリティーのある肉体表現を特徴とし、独特のエロティシズムを感じさせます。

8. 新聞・雑誌

新聞や雑誌の仕事は長期に携わっており、膨大な数、そしてエロスからメルヘンにいたるまで表現の幅が広いジャンルです。記事の内容、著者の嗜好、印刷の仕様などにも目配りし作風や画材を使い分ける柔軟性によって、振幅のあるイラストレーションがつくり出されています。

「母の友」(1964.9)表紙原画
刈谷市美術館蔵
©︎AQUIRA

活路『週刊現代』原画
1994
刈谷市美術館蔵
©︎AQUIRAX

9. 書籍

1960年代から現在にいたるまで、宇野は書籍の装幀も数多く手掛けています。グラフィックデザイナー出身の宇野にとって、書籍の仕事はイラストレーションに加えて、造本や装幀のおもしろさを体感できる表現領域であり、本という存在を好む宇野にとっては、飽くことなく創作意欲がかき立てられる場といえます。

ことわざはお好き?『恋する魔女(For Ladies)』原画
1966
©︎AQUIRAX

バラード=樅の木と話した『はだしの恋唄(For Ladies)』原画
1967
刈谷市美術館蔵
©︎AQUIRAX

幸福についての七つの詩『ひとりぼっちのあなたに(For Ladies)』原画
1965
刈谷市美術館蔵
©︎AQUIRAX

10. 絵画・立体作品

1987年の個展を機に、展示空間を作るおもしろさを実感した宇野は、現在に至るまで毎回テーマを決めて個展を開催しています。クライアントのある仕事とは異なり、個展はモチーフや表現スタイルに制約されることがなく、自分ですべて決められる自由さが醍醐味と宇野は言います。2000年代には、石粉粘土で制作した人型のオブジェも制作しています。

《餃子姫》
2013
©︎AQUIRAX

11. 舞台美術

宇野は、舞台装置や衣装、メイク、演出や脚本に至るまで、演劇全体の総合的なプロデュースも行っています。特に1990年代以降は、集中的に演劇舞台に携わるようになりました。宇野が手がける舞台美術は、二次元の平面で見ていた宇野の世界がそのまま空間にあらわれるかのような魅力を放っています。

「Project Nyx第4回公演 星の王子さま」衣装原画
2009
©︎AQUIRAX

「Project Nyx第4回公演 星の王子さま」舞台原画
2009
©︎AQUIRAX

12. 近作・新作

俳句に親しみ「左亭」の俳号を持つ宇野は、近年、松尾芭蕉や寺山修司らが詠んだ句をテーマとした新作を描き続けています。また、SHAKALABBITSや、BUCK-TICK、椎名林檎らのポスターやグッズ、さらに資生堂「マジョリカ マジョルカ」の似顔絵ジェネレーター「マジョリ画」(2016年)など、さまざまなクリエイターや企業と活発にコラボレーションするなど、宇野の描き出す世界は現在でも幅広い世代やジャンルの人々から支持を得、創作の勢いは留まることがありません。

《龍の落とし子》
2020
©︎AQUIRAX