素材や技法、展示方法といった形態的な特徴が、作品を読み解く鍵となることも多いはずです。 1957年にデュッセルドルフで結成されたグループ・ゼロは、第二次世界大戦後、それまでの社会規範、芸術的伝統と訣別し、“ゼロ地点”から新しい芸術を目指した前衛運動でした。羽毛やコルク、小銭、ネオン管など、従来の美術作品には使われなかった、きわめて日常的な素材を作品に取り入れています。作品には具体的なイメージは見あたらず、選ばれた素材はほとんど加工もされないまま規則的に並べられているところをみると、作家の意図は「見たままを写実的に表す」「自らの内面を表現する」といった伝統的な芸術が目指したものとは異なる次元にあるようです。 作品の形態的な特徴を細かく観察しつつ、作家がなぜそれを選んだのかという点も考察してみると、作家が作品に込めたメッセージが見えてくるでしょう。 アーティスト： エンリコ・カステラーニ、ダダマイノ、ヤン・ヘンデリクセ、フランソワ・モレレ、ジャン・ティンゲリー、ジモーネ・ヴェスタヴィンター ダダマイノ《ことの動き》1995 photos: DaimlerChrysler Art Collection