「好きなものは自由に撮る」。蜷川実花のこうした一貫した姿勢から生み出される極彩色の作品は、視覚的な鮮やかさを超え、作家自身の濃度として見る者に鮮烈な印象を与えます。美術評論家・松井みどり氏は“地上の花、天上の色”という言葉で、蜷川実花だけが生み出せる写真の魅力を表現しました(本展の副題は、この松井みどり氏の言葉からとったものです)。
美大在学中のセルフポートレイトから出発した彼女の作品は、変化してやまない被写体が見せるほんの一瞬を、鋭敏に写し撮ってきました。ファッション、音楽、広告などさまざまなジャンルともクロスオーバーし、また、昨年は人気コミック『さくらん』の映画監督をつとめるなど、その幅広い活動は広く知られています。
本展では、現実の光景を撮影しつつも非現実を映し出す“花”、自らの写真家としての力量を問う“旅”、タレントや女優のイメージまでも創出する“ポートレイト”などの代表作はもちろん、初期作品や、最新作《Noir》を加えた500点を超える膨大な数の作品によって、写真家としての蜷川実花の過去から未来を紹介します。