世界中の若い世代の作曲家に創作を呼びかける「
武満徹作曲賞」を核とした、東京オペラシティの同時代音楽フェスティバルが「コンポージアム」(造語:Composition + Symposium)です。
「
武満徹作曲賞」は、ただ一人の作曲家が審査員をつとめるというユニークさと、受賞者のその後の活躍などにより、今や世界的に知られている作曲コンクールです。10回目となる2008年は、世界中から尊敬と人気を集める作曲家スティーヴ・ライヒ Steve Reich を審査員に迎えます。これまで作曲コンクールの審査依頼はすべて断ってきたというライヒが、本作曲賞の趣旨に賛同し、初めてコンクールの審査員を務めるのが大きな話題です。そして、今回に限り、ライヒ自身の強い希望により、オーケストラ作品ではなく、アンサンブルのための作品を対象としています。世界27カ国から集まった76作品の中から、スティーヴ・ライヒがいかなる才能を発掘するか、注目です。
あわせて、「コンポージアム2008」では、ライヒの音楽世界も紹介します。いわゆるミニマル・ミュージックの先駆者の一人に位置づけられるライヒですが、楽器はもとより、人声、街の騒音、テープ、ビデオ、コンピュータなどあらゆる音素材やテクノロジーも活用し、また時にユダヤ人としてのアイデンティティや社会的テーマも扱うなど、単にミニマリズムの枠に収まらない独創的な音楽で、以後の世代の作曲家のみならず、多くの異ジャンルのミュージシャンやアーティストたちにも大きな影響を与えてきました。そして70歳を超えた今も、国や世代を超え圧倒的な評価と人気を誇ります。あくまでも生身の人間による演奏を重視するライヒの音楽は、一見メカニカルな構造からは想像もつかないような豊かで生き生きしたサウンドを響かせます。
彼の作品演奏にはきわめて高度な合奏力を必要とするため、今回は、ドイツを代表する現代音楽アンサンブルであり、ライヒの信頼も厚い「アンサンブル・モデルン」と、やはりライヒ作品には欠かせないイギリスの声楽アンサンブル「シナジー・ヴォーカルズ」、そして指揮者のブラッド・ラブマンを招聘。ライヒ自身も演奏に参加し、2日間にわたって新旧の代表曲を上演します。また、期間中、トーク・セッションも予定しています。
なお、ライヒは、2006年10月、第18回高松宮殿下記念世界文化賞授賞式出席のためごく短期間来日しましたが、公開のコンサートやイベントに参加する形での来日は、1997年9月『The Cave』上演以来、約11年ぶりです。
世界的な作曲家を迎え、優れた現代作品を優れた演奏で楽しめる「コンポージアム2008」にご期待ください。