ハインツ・ホリガーの音楽《スカルダネッリ・ツィクルス》 The Music of Heinz Holliger ─ Scardanelli-Zyklus
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ハインツ・ホリガー
© D.Vass -
フェリックス・レングリ
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ラトヴィア放送合唱団
© Matiss Markovskis -
アンサンブル・ノマド
© Maki Takagi
2017年5月25日[木]19:00
コンサートホール
指揮:ハインツ・ホリガー
フルート:フェリックス・レングリ
ラトヴィア放送合唱団
(合唱指揮:カスパルス・プトニンシュ)
アンサンブル・ノマド
ホリガー:スカルダネッリ・ツィクルス
(1975-91、日本初演)[上演予定時間:約2時間半 休憩なし]
Holliger: Scardanelli-Zyklus für Solo-Flöte, kleines Orchester, Tonband und gemischten Chor (1975-91) [Japanese premiere]
ホリガーの音楽の集大成ともいえる演奏時間2時間半におよぶ大作、日本初演!
作曲家ホリガーの集大成ともいえるこの作品は、1975年から書き始められた、ソロ・フルートのための《(t)air(e)》、小管弦楽のための《スカルダネッリのための練習曲》、ヘルダーリンの詩による無伴奏合唱のための《四季》をもとに、それらを組み合わせたり、新たな曲をつけ足したりしながら、1991年に完成しました。多彩な作曲技法が約2時間半の間、息つく間もなく展開され、この作曲家を代表する作品として、ヴェネツィア・ビエンナーレのイタリア批評家賞“Premio Abbiati”を受賞するなど、高く評価されています。
演奏は至難を極め、特に合唱には微分音による無伴奏の超絶的な技術を必要としており、「この合唱団以外考えられない」とホリガーに言わしめた世界的合唱団の演奏にも注目です。
音楽の極限をもとめて。
私は彼のあらゆるCDと関連物を集めるホリガーフリークで、この作品は作曲家ホリガーの軌跡を考えた時、非常に重要な位置にあり、同時に戦後の現代音楽においても特に重要な音楽のひとつだと思っています。
ヘルダーリンの詩は四季をうたっているけれど、その世界は抑揚もなければ自然を諦観しているかのようで、以前パリで「まだ人間も存在しないエデンの園のような」という解説を読んで、私も同じ印象を持ちました。いわば虚無の音楽、絶対に音楽的にはクライマックスに至ることはないけれども、表現を限界まで引き出す、「極限の音楽」がそこにはあります。
ホリガーは何より、詩と音楽の連携を、詩人の伝記というか生活全体を取り込んで作曲しているのです。だからこそ一つの全体像が聞こえてくるし、その中で音色的に違う、表現が違うものが並んでいる。人間が諦観し、精神を病んで37年間もテュービンゲンの塔に籠り生きた感じも全体から受けとれます。しかも同時に美しい。澄んだ、透明な響きがするのです。
20曲近いそれぞれの曲が多彩で、その多面性がとても魅力的だし、持てる作曲のパレットをつぎ込んだ、一つ一つの響きがホリガーの総決算のように感じられるのです。(談)
野平一郎(作曲家)