単色のリズム 韓国の抽象

展覧会についてExhibition

本展は、韓国の抽象絵画の流れを19人の作家の作品を通じて見ようとするものです。20世紀の前半には日本の影響を受け、大戦後はイデオロギーの対立による混乱を経験した韓国において、作家が作品の制作、発表を行うこと自体にも困難がありました。また、日本をはじめとする他国の影響下にあった韓国の美術が、自国のアイデンティティを希求する衝動は強固なものであったと想像できます。

韓国の抽象絵画の軌跡は、こうした状況のなかでそれぞれの作家が独自に切りひらいてきたもので、ひとつの流れに規定することはできません。しかし本展の出品作家を大別してその特徴を見ようとすれば、大戦前の日本の制度で教育を受け、日本や欧米に渡って同時代の抽象芸術のさなかに身を置いた金煥基、郭仁植、李世得、大戦後の新しい制度のもとで美術教育を受け、アンフォルメルなど欧米の同時代美術の影響を受けながら、のちに「単色画」とよばれる韓国独自の抽象を生んだ権寧禹、丁昌燮、尹亨根、朴栖甫、河鍾賢、李禹煥、こうした先人の精神を受け継ぎ、現在の韓国美術を牽引する世代、とゆるやかに三つの世代にわけることができるでしょう。

本展では、韓国の豊かな抽象表現のすべてを網羅することは到底できませんが、さまざまな困難と闘いながら獲得された、静謐さと洗練をあわせ持つ韓国独自の抽象絵画の一端をご覧いただく機会となれば幸いです。