韓国の抽象絵画は、欧米の同時代美術を受容する過程で東洋的な精神性をたたえた韓国固有の表現として確立し、ことに1970年代に生まれた「単色画(ダンセッファ)」は、極限までそぎ落とされたミニマルな美しさと繊細な息づかいを特徴として豊かな発展をみせました。この動向を担った作家たちは、本国の韓国と並んで日本でもさかんに紹介され、70年代から90年代にかけて両国アートシーンの活発な交流をもたらしました。その後、2015年にヴェネチアで単色画の大規模な展覧会が開催されたことなどがきっかけとなり、急速に再評価が進んでいます。
近年、世界的なブームといえるほどの注目を集める韓国の抽象ですが、当館では寺田コレクションの中核のひとつとして1999年の開館当初から収蔵しており、国内でも有数のまとまったコレクションとなっています。本展は、韓国の単色画とそれを受け継ぐ世代を、当館コレクションとともに全国の美術館や所蔵家の協力を得て総合的に展覧するものです。欧米文化の受容から韓国独自のアイデンティティを探求するなかで獲得された静謐さと洗練をあわせ持つ作品からは、表現とはなにか、というシンプルで奥深い問いが投げかけられているようです。単色の画面に静かに響く呼吸は、私たちの感覚を研ぎ澄まさせ、豊かな視覚体験へと誘ってくれるでしょう。
朴栖甫 パク・ソボ
PARK Seo-Bo
《描法 No.000508》
2000
韓紙、ミクストメディア、キャンバス
182.0 x 229.0cm
三重県美術館蔵
鄭相和 チョン・サンファ
CHUNG Sang-Hwa
《無題 90-1-12》
1990
アクリル絵具,キャンバス
162.0 x 130.0cm
東京オペラシティアートギャラリー蔵
photo: HAYAKAWA Koichi
[作家一覧]
金煥基 | キム・ファンギ | KIM Whanki | 1913 - 1974 |
郭仁植 | カク・インシク | QUAC In-Sik | 1919 - 1988 |
李世得 | イ・セドク | LEE Se-Duk | 1921 - 2001 |
権寧禹 | クォン・ヨンウ | KWON Young-Woo | 1926 - 2013 |
丁昌燮 | チョン・チャンソプ | CHUNG Chang-Sup | 1927 - 2011 |
尹亨根 | ユン・ヒョングン | YUN Hyong-Keun | 1928 - 2007 |
徐世鈺 | ソ・セオク | SUH Se-Ok | 1929 - |
朴栖甫 | パク・ソボ | PARK Seo-Bo | 1931 - |
鄭相和 | チョン・サンファ | CHUNG Sang-Hwa | 1932 - |
河鍾賢 | ハ・チョンヒュン | HA Chong-Hyun | 1935 - |
李禹煥 | リ・ウファン | LEE U-Fan | 1936 - |
崔明永 | チェ・ミョンヨン | CHOI Myoung-Young | 1941 - |
徐承元 | ソ・スンウォン | SUH Seung-Won | 1941 - |
李正枝 | イ・ジョンジ | LEE Chung-Ji | 1943 - |
李康昭 | イ・ガンソ | LEE Kang-So | 1943 - |
金泰浩 | キム・テホ | KIM Tae-Ho | 1948 - |
崔恩景 | チェ・ウンギョン | CHOI Eun-Kyoung | 1958 - |
李仁鉉 | イ・インヒョン | LEE In-Hyeon | 1958 - |
尹熙倉 | ユン・ヒチャン | YOON Hee-Chang | 1963 - |