イントロダクション
Introduction

このたび、東京オペラシティアートギャラリーでは、泉太郎の個展「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.」を開催いたします。
泉太郎(1976- )は、作品の内臓のようなシステムを作り、存在の可塑性を掘り起こす作品、メディア化された身体と生身の身体の間を行き来して家具的な彫刻を構築する作品、身体機能を拡張・代替し、道具の機能を人間の身体に戻すようなパフォーマンスなど、多様な興味関心に根差した実験的な活動を続けています。泉は、自らが受け取った記憶や知識を常に批判的に検討し、そこに見出す矛盾を手掛かりに整合的な解釈や考え方を作り出してきました。
国内にとどまらず海外でも積極的に活動を行っており、2017年にパリのパレ・ド・トーキョーで海外初となる個展「Pan」を開催、さらに2020年にスイス・バーゼルのティンゲリー美術館でも個展「ex」を開催しました。
複雑で不条理なプロセスを経て立ち上がる泉の作品は多様で一括りにはできません。東京の美術館における初の個展となる本展では、古墳や陵墓、ストライキ、再野生化、仮病、鷹狩におけるマニング(懐[なつ]かせる)やフーディング(目隠し)他、数々のキーワードが絡み合う思考のプロセスと、コスプレ、キャンプ、被葬のような体験を織り交ぜ、不可知に向き合い続けるための永久機関を立ち上げます。

石舞台古墳 撮影: 表恒匡