展覧会の見どころ
Highlights

石川真生は、1953年、沖縄県大宜味村(おおぎみそん)に生まれました。1970年代から写真をはじめ、1974年、WORKSHOP写真学校東松照明教室で写真を学びます。沖縄を拠点に制作活動を続け、沖縄をめぐる人物を中心に、人々に密着した作品を制作している写真家です。被写体となる人々に耳を傾け、立場を越えて取材することで引きだされるリアルな人間像は、沖縄の現実を生々しい切り口で暴き出しています。
1970年代、石川は、沖縄在米兵の黒人のためのバーに勤めながら同僚たちの女性とその奔放な生活を撮影した〈赤花 アカバナー 沖縄の女〉、そのときに出会った黒人兵の故郷を訪ねる〈Life in Philly〉など、その時々の人間との出会いをきっかけに、立場を越えて写真を撮り続けるスタイルは、早くから確立されていました。

〈Life in Philly〉より 1986
〈赤花 アカバナー 沖縄の女〉より 1975-1977

沖縄を拠点に、旧日本軍、自衛隊、米軍に関わりのある人物や出来事を取材し、国内外を問わず精力的な撮影を行いますが、共通しているのは、あくまでも個々人の人間性を見つめ、被写体に接近する石川の独自のまなざしです。

〈ヘリ基地建設に揺れるシマ〉より 2002
旧暦3月3日、地域住民に基地を開放。名護市(キャンプ・シュワブ)、2002年4月
〈沖縄と自衛隊〉より 1993
「武装訓練」中。ミサイルを運ぶ。1993年9月9日
〈基地を取り巻く人々〉より 2009
米軍機が「普天間飛行場」に降りていく。宜野湾市上大謝名、2009年7月

近年では、〈日の丸を視る目〉を契機とした、〈森花―夢の世界〉〈大琉球写真絵巻〉など、創作写真ともいわれる作品を発表し、被写体との信頼関係を基盤にした作品作りは変わらず、いまもなお新たな制作に向けて取材を続けています。
本展は、1970年代の初期に発表していたプリントにはじまり、現在に至るまでの写真家活動を振り返ります。それぞれのシリーズから作品を選択し、とりわけ近年最も注力を注いでいる〈大琉球写真絵巻〉の近作、最新作を含め総数約170点もの作品を展示し、作家が築き上げてきた沖縄に対する独自のまなざしを紹介します。

〈港町エレジー〉より 1983-1986
〈沖縄芝居―名優たち〉より 1989-1992
兼城道子さん
〈大琉球写真絵巻 パート1〉より 2014
「薩摩よ、来るな!」。祈るカミンチュ(神人)。
〈日の丸を視る目〉より 2008
「波にのまれて、アップアップしている中で考えて、もがきながら心の前進をしたい。今まで、ただ楽しいだけで生きていた。そこで止まっている子もいるけど自分は違う。名護の子と日本の子といっしょに前に進みたい。海の中はなぜか安心する」大城若菜(26歳)、演劇学校学生、沖縄県名護市、2008年6月8日