イントロダクション
Introduction

沖縄を拠点としながら精力的な制作活動を続ける写真家・石川真生(いしかわ まお 1953-)の初期からの主要な作品を始め、とりわけ2014年から取り組んでいる「大琉球写真絵巻」の新作を中心に展示し、石川真生の実像に迫る個展を開催します。
石川の作品は、2004年の横浜美術館でのグループ展「ノンセクト・ラディカル 現代の写真III」において、沖縄以外の美術館で初めて紹介されました。以来、国内外での数多くの展覧会を経て、2021年には沖縄県立博物館・美術館にて回顧展「石川真生:醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ。」が開催されました。本展は回顧展で示された成果も踏まえつつ、東京で初めての個展として開催します。
石川の写真は、国内外にパブリックコレクションがあり、その活動も広く知られているにもかかわらず、これまで発表された作品の流れを紹介する機会が多くありませんでした。本展では、初期の作品から最新作に至るまで、石川の作歴を概観することができると同時に、昨年沖縄の本土返還50周年を迎えるもなお、困難な状況に置かれている現代の沖縄という地政学的な最前線で撮影を続けている石川の活動をご覧いただく好機にもなります。

〈大琉球写真絵巻 パート9〉より 沖縄でバイレイシャル(ミックスルーツ)として生きること 2021
【親富祖大輔41歳、愛39歳、ティーダ11歳、ユンタ10歳、ニヌファ6歳、カナヨー3歳。】日本や沖縄でミックスルーツの子供達がどう扱われてきたかを隠すのが優しさだろうか。1985年まで日本国籍がもらえずにいたこと、公立の学校に通うこと、戦争孤児の施設に入ることすらゆるされなかったこと。なぜこんなにミックスルーツの子供達が増え、生まれ育っているのに、社会はいつまでも昨日来たばかりの外国人のように区別するのか。学校教育に求めたい。日本人教育を変わらず推し進める姿勢を問いたい。日本人らしさを子供達に乱暴になげていないだろうか?おじぎの文化を教える時に日本人らしいと付け加えることで、ミックスルーツの子供達を置き去りにしていないだろうか?社会がマイノリティに与える問題を理解出来ないということは、無意識に自分自身が与えていることにも気付けていなかったりする。アメリカの犠牲の上に成り立つ社会も沖縄の米軍基地も人種主義もマイクロアグレッションも成り立たせているのは無関心の意識の人々だ。そういう人達が無関心から抜け出すと社会や世界は変わる。(2021年4月24日、本部町営市場)