Architecture of Terunobu Fujimori and ROJO from Venice Biennale: 10th International Architecture Exhibition 2006
藤森建築と路上観察

プロフィール|Profile

藤森照信|ふじもり・てるのぶ

本業は、建築史研究だが、現在は、建築家として作品も作っている。

建築史研究では、日本の明治以後の西洋館をはじめとする近代建築を主なテーマとし、1982年に刊行した『明治の東京計画』(岩波書店刊)では毎日出版文化賞を得ている。

研究の一環として、1974年、仲間と東京建築探偵団を結成し、地図とカメラを持ち、東京の下町の商店街から山の手の住宅地までを歩きまわり、忘れられ埋もれた西洋館の発掘を進め、そうした成果を『建築探偵の冒険 東京篇』(筑摩書房 1986年)として刊行し、サントリー学芸賞を受ける。以後も建築探偵稼業の成果をさまざまなメディアを通して一般に向けて発表しつづけている。

町を歩いて忘れられた建物を発掘するなかで、似たような関心から町のなかの不思議な物件を採集していた赤瀬川原平、南伸坊、林丈二、松田哲夫らと知り合い、1986年、路上観察学会を発足させて今日に至る。

長らく建築史都市史関係の研究と文筆活動を専らとしてきたが、1991年、郷里の長野県茅野市の依頼で、《神長守矢史料館》を作り、44歳にして建築家としてデビューする。

鉄筋コンクリートの構造体を地元の石や土や手割りの板ですっぽり包むというこれまで世界の誰も試みたことのない作り方の建物を世に問い、建築界の大方はケゲンな目で眺めていたが、隈研吾は「見たこともないのに懐かしい」と評価した。以後、少しずつ理解者が現われ、《天竜市立秋野不矩美術館》(1997)、《熊本県立農業大学校寮》(2000)、壁から屋根にタンポポを植えた《タンポポハウス》(1995)、ニラの《ニラハウス》(1997)、細川護煕氏のための茶室《一夜亭》(2003)を作り、最近作としては樹上6mの高さに作った茶室《高過庵》(2004)がある。《ニラハウス》では日本芸術大賞を受け、《熊本県立農業大学校寮》では日本建築学会作品賞を受けている。

1946年、長野県に生まれ、東北大学、東京大学大学院と進んで、現在は東京大学生産技術研究所教授。
(本人筆)


藤森照信、赤瀬川原平、南伸坊、松田哲夫、林丈二
写真提供:国際交流基金
撮影:増田彰久

路上観察|Objedts collected by tha ROJO Society

赤瀬川原平|あかせがわ・げんぺい

作家、画家。1937年横浜生まれ。1960年代には「ハイレッド・センター」など前衛美術家として活動する。1981年、『父が消えた』で芥川龍之介賞受賞。1983年、『雪野』で野間文芸新人賞受賞。1987年、『路上探険記』で講談社エッセイ賞受賞。主著に『肌ざわり』、『超芸術トマソン』、『老人力』などがある。

南伸坊|みなみ・しんぼう

イラストレーター、エッセイスト。1947年東京生まれ。マンガ雑誌「ガロ」の編集者をへて独立、軽妙なイラストとエッセイで活躍する。1998年、講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。主著に『モンガイカンの美術館』、『ハリガミ考現学』、『笑う写真』、『顔』、『仙人の壺』、『李白の月』、『本人の人々』などがある。

松田哲夫|まつだ・てつお

編集者。筑摩書房専務取締役。1947年東京生まれ。編集者として、数々の話題作、ヒット作を世の中に送り出してきた。また、ブック・コメンテーターとしてテレビなどに出演している。2002年、『印刷に恋して』でゲスナー賞本の本部門銀賞受賞。主著に『編集狂時代』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』などがある。

林丈二|はやし・じょうじ

エッセイスト、明治文化研究家。1947年東京生まれ。小学校時代から調査することが好きだった。1970年、マンホールの蓋に注目し、日本をはじめ世界中のそれを観察する。主著に『マンホールの蓋[日本篇]』、『マンホールの蓋[ヨーロッパ篇]』、『イタリア歩けば』、『フランス歩けば』、『東京を騒がせた動物たち』などがある。

杉浦日向子|すぎうら・ひなこ

漫画家、江戸風俗研究家。1958年東京生まれ。1984年、『合葬』で日本漫画協会賞優秀賞受賞。1988年、『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞受賞。主著に『百日紅』、『江戸へようこそ』、『大江戸観光』、『百物語』、『江戸美味草紙』、『ごくらくちんみ』などがある。2005年、下咽頭ガンのために逝去。