武満徹作曲賞
審査結果・受賞者の紹介
2001年度
審査員
本選演奏会
2001年5月27日[日] 東京オペラシティ コンサートホール
指揮:スザンナ・マルッキ、東京フィルハーモニー交響楽団
受賞者
- 第1位
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アーリン・エリザベス・シエラ(アメリカ)
オーケストラのためのアクィロ (賞金100万円)レネ・メンゼ(ドイツ)
形象─鏡像 (賞金100万円)
- 第2位
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ルーク・ベットフォード(イギリス)
オーケストラのための5つの小品 (賞金70万円)
- 第3位
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窪田隆二(日本)
オーケストラのための「石/星」 (賞金30万円)
- 選外佳作
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木下正道(日本)
サラ ─ ユーケル III
審査員:オリヴァー・ナッセン 講評
このステージの上にたつのは、とても恐ろしいです(笑)。私にとっては指揮をする方が、話すよりも楽ですが、今日の指揮をするのは楽ではなかったでしょう。東京フィルハーモニー交響楽団と指揮をしたマルッキ氏に多大なお礼を述べたいと思います。私の耳には、彼女がこの曲をついこの間までは、知らなかったとは思えないほど、素晴らしい演奏だと感じました。
そして、今回の水準は本当に高いものでした。本当に演奏するのは難しかったと思います。この「コンポージアム2001」で自分の作品を演奏してもらったのも嬉しかったし、もし、ここに亡き武満氏がいたら、まちがいなく誇りに思うであろう素晴らしいコンサートが行われて喜んだと思います。東京オペラシティ文化財団に感謝します。
半年前、今回の作曲賞に応募された譜面を見ました。そしてこの5曲を選ぶ優先順位として、「どの曲をこの場で聴きたいか」というのが念頭にありました。87作品から、20作品に選抜するのは難しいことではありませんでしたが、5曲に絞るのは不可能なほど難しく、しかしベストを尽くして選抜しました。この数日間ほとんど寝ていません(笑)。
今回の5曲は、それぞれ違った趣きがあることが誇りです。
私が選んだ基準ですが、「作曲家がしたいことが、どのくらいの基準で技術的に達成されているか」ということに重点を置きました。
受賞者のプロフィール
第1位
アーリン・エリザベス・シエラ(アメリカ)
オーケストラのためのアクィロ
1970年6月1日生まれ。オバーリン大学、イエール大学大学院を経て、1999年ミシガン大学博士課程修了。これまで数々の賞や奨学金を獲得。作品は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツをはじめ、アスペン音楽祭、ダーティントン音楽祭でも演奏される。
- 受賞者の言葉
- 10年前、日本の美術史を勉強したことがあるので、今日はとても嬉しかったです。そして、10年後に作曲家として、ここに来れたことを嬉しく思います。この国に来ることはとても緊張しましたが、皆さんに歓迎されて本当に嬉しいです。東京オペラシティ文化財団とナッセン氏に感謝すると共に、東京と日本の皆さんに感謝します。芸術的な活動ができたことに、本当に満足しています。
第1位
レネ・メンゼ(ドイツ)
形象―鏡像
1969年2月2日ハンブルクに生まれる。12歳でクラシック・ギターとピアノを習い始め、作曲も始める。1988年から1995年にかけて、ハンブルク音楽大学と劇場にてウルリッヒ・レイエンデッカー氏に師事し、作曲と理論を学ぶ。その後、フリーの作曲家として活動する一方、1989年よりPeer Music Germany(出版社)のポピュラー音楽のアレンジャーを務める。2000年には第1回ゲッティンゲン・ギターセミナーにおいてギターソロ曲で第3位入賞。
- 受賞者の言葉
- 東京オペラシティ文化財団とナッセン氏に感謝します。この賞に関しては、本当に誇りに思うし、感謝しています。東京フィルハーモニー交響楽団の素晴らしい演奏と指揮者であるマルッキ氏の親しみやすく、完璧に近い演奏に感謝します。
第2位
ルーク・ベットフォード(イギリス)
オーケストラのための5つの小品
1978年4月25日生まれ。ロンドン王立音楽カレッジにてエドウィン・ロクスバーガとサイモン・ベインブリッジに師事し、現在、RVW基金と2000年度メンデルスゾーン奨学金を受けて王立音楽アカデミーに在学中。1998年マンチェスターで行われたISCMフェスティバルで作品が演奏され、BBCラジオ3で放送された。2000年にはロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティ作曲賞を受賞。4月に自作《Five Abstracts》がロンドン・シンフォニエッタにより初演された。
- 受賞者の言葉
- 東京オペラシティ財団とナッセン氏、今日の演奏者に感謝します。素晴らしい演奏でした。私にとって、このコンクールに参加でき、日本に呼んでもらえて、貴重な体験になりました。ありがとうございます。
第3位
窪田隆二(日本)
オーケストラのための「石/星」
1965年10月13日生まれ。18歳より独学で作曲を学ぶ。1990年より神奈川県内の私立高校の現代文教諭。
- 受賞者の言葉
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自分は教員なので、大勢の前で話すのは慣れているのですが、今日は緊張しています。この作曲賞の応募資格規定は35歳まで。自分は今、35歳で、もうこれで作曲をやめようと思い、力を抜いて好きな曲を書けたと思います。この賞は、指揮者のマルッキ氏がくれたものと感謝しています。色々な人が支えてくれているなと思っています。ナッセン氏にお礼を言いたいと思います。
最後に1つ、外国人のファイナリスト達にリハーサルの後、“安いお店に連れていって”といわれ、「つぼ八」に連れて行きました(笑)。そこで、とても良い友達になることができ、自分の財産になりました。
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