COMPOSIUM 2002


湯浅譲二の宇宙


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→特別寄稿「走れ湯浅譲二」 権代敦彦(作曲家)




湯浅譲二 プロフィール


湯浅譲二
photo (c) Akira Muto

1929年福島県郡山市生まれ。少年期より音楽活動に興味をおぼえ独学で作曲を始める。49年慶応大学医学部教養課程に入学。在学中より秋山邦晴、武満徹らと親交を結び、51年「実験工房」に参加、作曲に専念する。以来、オーケストラ、室内楽、合唱、劇場用音楽、インターメディア、電子音楽、コンピュータ音楽など、幅広い作曲活動を行っており、国内はもとより、世界の主要オーケストラ、フェスティバルなどから多数の委嘱を受けている。これまでにニューヨークのジャパン・ソサエティ、DAADのベルリン芸術家計画、シドニーのニュー・サウス・ウェールズ音楽院、トロント大学など世界各国から招聘を受け、また、ハワイにおける今世紀の芸術祭、香港のアジア作曲家会議、英国文化振興会主催の現代音楽巡回演奏会、アムステルダムの作曲家講習会などに、ゲスト作曲家、講師として参加するなど、国際的に活動している。81年からカリフォルニア大学サン・ディエゴ校教授(現在名誉教授)を務め、現在日本大学芸術学部教授、東京音楽大学客員教授を務めている。97年第28回サントリー音楽賞を受賞。98年より武満徹の後任として、「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」のアーティスティック・ディレクターを務めている。





湯浅譲二からのメッセージ


審査に臨んで
応募総数は122曲。これまで最多の数だった。作風は幼稚なものから、高度な技法を駆使したものまで千差万別、まず更に精査すべきものとして22曲を残した。選択の規範として、私は、創造性、オリジナリティを最も根本的なものとした。もっとも、イメージやアイデアに新鮮なものがあっても、それがオーケストラという媒体を通して技術的に現実化、つまり音響化されていなければ問題にならないことは言うまでもない。その上で私が何よりも留意したのは、現代的な技法を如何に巧みに使っても、これまでに聴いたような音楽性、言い換えれば、いわば上手にそつなく書かれているスコア、つまりアカデミックな優等生的なもの、さらにはまた、私が言う、いわば〈未聴感〉のものであっても、聴く者に感銘を抱かせないような曲、これらを注意深く避けた。したがって、通常のコンクールに残るような、立派に書けている、いわばエクリチュール主義が選ぶ類の曲はここにはない。最後に残った5曲は、それに反して、たとえ技法的には多少幼くとも、音の時間的構造物として、明確な主張をもつものばかりである。ここで聴く者は、まず私自身であるから、私が聴きたいと思う曲を選んだ。また演奏される5曲の他にも、更に5曲程は聴くに値するものがあったことも言っておきたい。私の出発点からの親友としてほとんど時空をともにして来た武満徹の設けた「武満徹作曲賞」の審査を、私の場合リゲティの指名によるとは言え、今回、私一人の審美的判断ですましたということを、私の知る武満は喜んでくれていると思う。選抜された5曲は、それぞれ全く異なる個性を持っているので、演奏による音響化を楽しみにしているところである。
湯浅譲二





◎ 主な受賞歴

1961年 ベルリン映画祭審査員特別賞〈TV「日本の美・佛」〉
1966年 イタリア賞〈コメット・イケヤ〉
1967年 イタリア賞〈愛と修羅〉、サン・マルコ金獅子賞〈記録映画「母たち」〉
1973年 第21回尾高賞《クロノプラスティク》
1987年 第36回尾高賞《啓かれた時》
1995年 飛騨古川音楽大賞
1997年 1996年度第28回サントリー音楽賞《ヴァイオリン協奏曲》
1999年 日本芸術院賞
2000年 第23回日本アカデミー賞映画音楽優秀賞受賞〈映画「梟の城」〉
その他、数多くの文化庁芸術祭優秀賞、大賞を受賞。





◎ 主な作品

【オーケストラ】
箏とオーケストラのためのプロジェクション「花鳥風月」(1967)
クロノプラスティク I(1972)
オーケストラの時の時(1976)
ヴィオラとオーケストラのための「啓かれた時」(1986)
オーケストラのためのレクイエム(1980)
組曲《芭蕉による情景》(1980-89)
シベリウス讃 ─ミッドナイト・サン─(1991)
始源への眼差 II(1992)
ピアノ・コンチェルティーノ(1994)
レスポンソリウム〜「和解のレクイエム」より(1995)
交響組曲《奥の細道》(1995)
ヴァイオリン協奏曲《イン・メモリー・オヴ武満徹》(1996)
コズミック・ソリテュード(1997)
クロノプラスティク II(1999)
クロノプラスティク III(2001)
内触覚的宇宙 V(2002)

【室内楽】
2つのパストラール(1952)
内触覚的宇宙(1957)
相即相入(1963)
弦楽四重奏のためのプロジェクション(1970)
オン・ザ・キーボード(1972)
クラリネット・ソリテュード(1980)
冬の日・芭蕉讃(1981)
天気予報所見(1983)
内触覚的宇宙 II 〜トランスフィギュレーション(1986)

【電子音楽】
葵の上(1961)
ホワイト・ノイズのための「イコン」(1967)
ヴォイセス・カミング(1969)
マイ・ブルースカイ第1番(1975)
「夜半日頭」に向かいて−世阿弥頌−(1984)

コンピューターと室内アンサンブルのための「世阿弥・九位」(1988)
始源への眼差(1991)

【合唱/声楽作品】
アタランス(1971)
演奏詩「呼びかわし」(1973)
芭蕉の俳句によるプロジェクション(1974)
世阿弥「九位」によるコンポジション(1983-84)

【テレビドラマ音楽】
コメットさん(1967)
木枯し紋次郎(1972)
元禄太平記(1975)
草燃える(1979)
徳川慶喜(1998)

【童謡】
走れ超特急
インディアンがとおる
はっぱがわらった

【映画音楽】
薔薇の葬列(1969・監督 松本俊夫)
悪霊島(1981・監督 篠田正浩)
お葬式(
1985・監督 伊丹十三)
梟の城(1999・監督 篠田正浩)

【その他】
冬の光のファンファーレ(長野オリンピック・ファンファーレ)(1998)





◎ 主なCD

「マイルストーンズ・オン・ザ・キーボード」  ニューリリース(発売中)
湯浅譲二ピアノ作品集
野平一郎(ピアノ)
MusicScape MSCD 0009

「始源、そして未来へ」
湯浅譲二 生誕70年コンサートライブ  ニューリリース(発売中)
野平一郎(ピアノ)、溝入敬三(コントラバス)
木ノ脇道元(フルート)、安田謙一郎(チェロ)
MusicScape MSCD 0010

「始源への眼差」湯浅譲二管弦楽作品集
《芭蕉による情景》 I, III, V/ヴィオラとオーケストラのための「啓かれた時」他全4曲
岩城宏之指揮 東京都交響楽団
外山雄三指揮 NHK交響楽団他
Fontec FOCD 2508

交響組曲「奥の細道」
FTC(福島中央テレビ)開局25周年記念 委嘱作品
本名徹二指揮 読売日本交響楽団
Fontec FPCD 2015

サントリーホール10周年記念コンサートより
湯浅譲二/ヴァイオリン協奏曲─イン・メモリー・オブ・武満徹─ 他
若杉弘指揮 NHK交響楽団 堀米ゆず子(ヴァイオリン)
Sony Records SRCR 1777

湯浅譲二 作品集成 I
オーケストラの時の時〜1楽章、クロノプラスティク I 他全4曲
尾高忠明指揮 東京都交響楽団他
DENON COCO 78448

- 《和解のレクイエム》(13曲目が湯浅譲二作曲「レスポンソリウム」)
ヘルムート・リリング指揮 イスラエルフィルハーモニー管弦楽団
hanssler CD 98.931(2枚組)

作品集
《世阿弥・九位》/《始源への眼差し I 》他全3曲
ケント・ナガノ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン他
NEUMA 450-96

- THE JAPANESE SAXOPHONE
湯浅譲二/私ではなく風が・・・ 他
クロード・ドラングル(サクソフォン)
BIS BIS-CD-890

COMPUTER MUSIC CURRENTS 9
湯浅譲二/「夜半日頭」に向かいて−世阿弥頌−
Cecil Lytle(ピアノ)
WERGO WER 2029-2





◎ 主な書籍

著作集『人生の半ば〜音楽の開かれた地平へ』(1999)
慶應義塾大学出版会 ISBN4-7664-0778-4

対談集『音楽のコスモロジーへ』(1981)
大岡信、篠田正浩、観世栄夫、杉浦康平らとの対談集
青土社 0073-800024-3978





◎ 関連サイト

東京コンサーツ(詳細なプロフィール、最新情報など。)
http://www.tokyo-concerts.co.jp/
湯浅譲二のページ
http://www.tokyo-concerts.co.jp/artist/yuasa.html






◎ 最新情報

2002年1月17、18日、日本フィル第537回定期演奏会で「内触覚的宇宙 V」(日本フィルシリーズ第36作)が世界初演されました。
→日本フィルのホームページ






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