意図的に都市の中に埋もれるように建つD&Dの建築ですが、それらは決して寡黙な存在ではありません。都市固有の記憶をたぐり、その現在の活動を読むこと。D&Dの建築はこのような分析の結果をさまざまな形で増幅させ、都市が未来に向かって新たな物語を紡ぎ出すための装置として機能することを目指しています。セクション2では、一見際立つ個性のない「弱い建築」に見える彼らの作品がどのような思考の中で生まれ、さまざまな要素の連環の中で創造的な装置として形を成しているかを探ります。
代表作に数えられる《在独スイス大使館》は、D&Dの設計への姿勢を表す好例です。このプロジェクトは、ヒトラーによるベルリン改造計画と第二次世界大戦の爆撃によって周囲の街並みが一切失われ、長らく陸の孤島となっていたベルリンの旧スイス大使館に改修と増築を施すというものでした。ナチスによる支配、東西冷戦、そして壁崩壊を見つめてきた旧大使館は、空間の背後に潜む歴史や発展の重層的な結実としての都市においてどのような存在となりうるか。そのために導き出された建築的な解答とは。
セクション2では、新築、改築、マスタープランの別をとわず行われるD&Dの分析と提案が、コンペティションにあたって制作される資料の展示によって具体的に紹介されます。大判のブックのページをめくりながら、プロジェクトごとに異なる諸条件への取り組みと、そこに通底する彼らの都市的・建築的な思想を読み取って頂きます。