都市との対話の中で創造され、都市の一部となることに自覚的なD&Dの建築は、設計においてプロポーション、そしてそれを形づくる素材も熟考されます。建築の外観をはじめ「目に見える要素」は建築が都市や人との関係を築く際の「表情」となりうること、またそれらがD&Dの建築思想を伝える手段になり、その考察が理念へと返っていくことから、色、素材、プロポーション、そしてディテイルは設計時に徹底的に研究されます。
セクション3で投影される作品写真では全体/部分の両面からD&Dの建築を見ていき、建築が実際の街並みをどのように形成しているかを検証します。またセクション4では、5つの作品に絞って実施設計の過程をたどり、D&Dの設計方法とプロジェクトを具体的に紹介、スタディ模型、モックアップ、さまざまな素材のサンプルが設計図とともに展示されます。
5つの例のひとつ《ノヴァルティス本社屋》は、バーゼルに本拠地を置く世界的な製薬会社の旧工場地区再開発計画にあたって第一棟目として選ばれたものです。その後、ペーター・メルクリ、フランク・ゲーリー、アルヴァロ・シザ、日本からもSANAA、安藤忠雄、谷口吉生、槙文彦ら著名な建築家による棟が発表され、この再開発計画は建築界で大きな話題となりました。D&Dの手掛けた本社屋は、色とりどりのガラスが皮膜となった矩形のランタンのような建築で、素材へのアプローチが秀逸なプロジェクトです。そのガラス20種類から家具のモックアップまで100点以上のサンプル、模型が展示されます。
会場を街に見立て、都市的スケール/身体的スケールの両面からD&Dの建築、その思考をたどる本展は、建築と都市、建築と人、都市と人との関係をあらためて考える機会となることでしょう。