東京という都市は、ヨーロッパの都市に見られるような連続壁体でつくられる都市構造ではなく、ひとつひとつ独立した建物(グレイン=粒)の集合体として構成されています。つまり、建物ごとに変容が容易に行われるようなシステムが内在しているのです。絶え間ない変化を続ける都市・東京は、「新しい建築」を生み出す孵化装置であるといえるでしょう。
2008年の資本主義経済の大きなクラッシュの後、資本権力のアイコンとしての建築が都市の主役から退場し、住宅という生活を支える建築のあり方が問われています。本展では、20世紀に展開した商業建築の林立とは異なる、生活を主体とした静かな都市要素の集積が、壮大な都市の変化を導いている状況に注目します。展示室では、こうした変化の中で新しい指針となる住宅の形式3例を紹介します。
〈第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館 展示風景〉 2010
写真提供:国際交流基金
photo: Andrea Sarti/CAST1466