展覧会について
Introduction

イギリスを代表するアーティスト、ライアン・ガンダーが当館収蔵品をキュレーションする異色の企画。当初予定していたガンダーの個展は新型コロナウイルス感染症を巡る情勢の急激な悪化、ことにイギリスにおけるロックダウンにより、やむなく開催を延期することとなりました。これに伴いガンダーから「この状況で僕にできることはないだろうか」「収蔵品展のキュレーションはイギリスからできるのでは」と申し出があり、当初上階(4階)で予定していた「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を全館で開催することとなりました。
コンセプチュアル・アートの新騎手として国際的に評価の高いガンダーは、日常生活のあれこれや、社会の仕組みなど、私たちが気に留めることすら忘れている物事をあらたな視点で観察し、解釈し、表現することについての第一人者といえます。その視点、観察、解釈が当館の収蔵品に向けられたなら、私たちにとって新しい鑑賞体験になることでしょう。当館の収蔵品は故寺田小太郎氏によるプライベート・アイ・コレクションであり、これはライアン・ガンダー×寺田小太郎の一対一の会話といえる展覧会でもあります。
展覧会は3階、4階それぞれにテーマを設け、ふたつの企画として行います。4階の「色を想像する」では、当館収蔵品が故寺田小太郎氏のプライベート・アイ・コレクションであるという特徴を踏まえて展示方法が工夫されています。3階の「ストーリーはいつも不完全……」では展覧会の常識をくつがえす「うす明かりの展示室内を懐中電灯で照らしながら作品を鑑賞する」という試みを行います。 「見る、そして想像する」ことをこれ以上なく意識させるライアン・ガンダーならではの展覧会。困難な状況でも冷静に考え、発想の転換でよりよいものにしようとするガンダーの姿勢は、私たちの作品鑑賞そして日常生活に新しい視点をもたらしてくれるでしょう。

*3階は懐中電灯で照らしながら作品を鑑賞していただきます。

寺田コレクションについて
東京オペラシティアートギャラリーの寺田コレクションは、寺田小太郎氏(1927-2018)の寄贈によるプライベート・アイ・コレクションです。東京オペラシティ街区の地権者であった寺田氏は、美術館創設に賛同・協力するため、本格的に作品の収集をはじめました。戦後の国内作家を中心とした約4000点にのぼるコレクションは、絵画、彫刻、陶芸、版画、写真など多岐にわたり、日本の戦後美術の広い範囲を包括するとともに、寺田氏個人の視点にもとづく独自性が特徴です。

小山穂太郎《Cavern》
2005
ゼラチンシルバープリント
photo: 早川宏一
野又穫《永遠の風景 17》
1988
アクリル絵具, キャンバス
photo: 早川宏一
大野俊明《風の調べ:洛北大原 宝泉院》
1995
顔料, 金箔, 和紙
photo: 斉藤新
堂本右美《ここ》
1998
油彩, キャンバス
photo: 斉藤新