展覧会
8.時の園丁
生前最後にまとめられた随筆集『時間(とき)の園丁』のなかで、武満徹は、人間が自立し自由になりために必要な無限の時間を拓く園丁のひとりでありたいと述べている。彼のさまざまなジャンルでの仕事を振り返ると、協同(コラボレーション)が大きな意味を持っているのがわかる。実験工房やその後の制作における美術家との協同、映画における監督との協同、作曲における古今東西の画家や文学者との協同。「私は音を使って作曲するのではない、私は音と協同するのだ」と述べる武満にとって、協同とは、未来の悠久の時間へと連なっていくためのひとつの方法論だったのかも知れない。同じ文章のなかで作曲家はこうも述べている。
「私の音楽は、たぶん、その未知へ向けて発する信号(シグナル)のようなものだ。そして、さらに、私は想像もし、信じるのだが、私の信号が他の信号と出合いそれによって起きる物理的変調が、二つのものをそれ本来とは異なる新しい響き(ハーモニー)に変えるであろうことを。(中略)したがって私の音楽は楽譜の上に完結するものではない。むしろそれを拒む意志だ。」(「未知へ向けての信号(シグナル)」)武満音楽との協同はこれからも、新しい可能性を示してくれるに違いない。
ラッセル・ミルズ
《Riverrun》(部分)
1992年
由布院空想の森 アルテジオ蔵
近藤一弥
《Visions in Time - Miyota》
2006年
Photo: KIOKU Keizo

(c) 2006 Tokyo Opera City Art Gallery