展覧会についてExhibition
ヘリット・トーマス・リートフェルトとディック・ブルーナはオランダのユトレヒトに生まれ、20世紀のデザインに大きな影響を与えた巨人です。家具職人から出発し、世界的な建築家となったリートフェルトは、名作椅子《レッド・ブルー・チェア》や、世界遺産にも登録されている《シュローダー邸》など、純粋な色彩と幾何学フォルムを使った斬新なデザインで注目を集めました。ブルーナは夥しい数のグラフィック・デザインと、とりわけ世界中で親しまれている「ミッフィー(うさこちゃん)」の絵本シリーズの作者として有名ですが、そぎ落とされた造形要素で多様な表現を紡ぎ出す手法は、リートフェルトからの影響も窺えます。二人の仕事は一見対照的に見えますが、共にオランダの歴史・風土に根ざし、「基本的な要素による純粋な表現」という点で、根幹となるデザインの理念を共有していると言えるでしょう。本展ではさらにリートフェルトとブルーナを結ぶ存在として、オランダの国民的玩具シリーズADO(アド)を日本で初めて紹介します。ADOはデザイナーのコー・フェルズーの指導のもと、サナトリウムの患者の作業療法として製作が始まりました。造形活動を社会貢献の場として活かすだけでなく、その高いデザイン性でオランダ中の子どもたちを楽しませたのです。
リートフェルトとブルーナ、そしてADO、本展は異なる時代のユニークな三つの視点で、生活に深く結びついたオランダのデザイン文化、その人間味溢れる魅力を探ります。