見どころ
Highlights
「着ること」の奥深さを再認識する展覧会
私たちは長い歴史の中で、さまざまな情熱や欲望を着る行為に傾けてきました。たとえば毛皮は豊かさや権力の象徴として古から尊ばれていましたが、現在では動物保護をうたう一方でその豊かな手触りを手放すことができないという、相反する価値観の間で揺れています。本展では、KCIが厳選した18世紀から現代までの衣服作品を通じて、「着ること」をめぐる人々の多様な願望である「LOVE」とそのありようについて見つめ直します。

2021年秋冬
撮影:守屋友樹
©京都服飾文化研究財団
着る人や創作する人の「LOVE」に溢れた作品を多数展示
美しい花柄が広がる18世紀の宮廷服、いまにも動き出しそうな鳥たちがあしらわれた帽子、極端に細いウエストや膨れ上がった袖のドレス。歴史を振り返れば、過剰や奇抜と思える装いにこそ当時の人々の美意識が凝縮しています。現代のデザイナーも新たな形や意味を服に込め、私たちの日々の気分を切り替えるだけでなく、別の何かへと変身できるような感覚を与えます。デザインを極限までそぎ落としてミニマルな記号へと還元するヘルムート・ラングや、時代や性別を超えた衣装で私たちの固定観念を揺さぶるコム・デ・ギャルソンがヴァージニア・ウルフの『オーランドー』に触発された作品などがその一例です。着る側と作る側それぞれの熱い「LOVE」から生み出された装いの数々が登場します。

1775年(テキスタイル 1760年代)
撮影:畠山崇
©京都服飾文化研究財団
服を着る「私」の存在とその認識を広げる美術作品を紹介
着るという行為は「私」という内面を映し出す輪郭に働きかけます。本展では、さまざまな願望や葛藤を抱えながら現代を生きる多様な「私」のありようを、現在活躍するアーティストの作品を通して紹介します。身近な友人との日常を切り取り、ありのままに生きることを肯定するヴォルフガング・ティルマンスの写真、同世代の女性たちのインタビューを題材にその日常と内面を描き出す松川朋奈の絵画、背負う貝殻を変えるヤドカリの姿に人のアイデンティティを重ねるAKI INOMATAの作品など、「私」をめぐる問いの現在形を探ります。

《やどかりに「やど」をわたしてみる ‒Border‒》
2010/2019年
京都国立近代美術館蔵
©AKI INOMATA
衣服から装飾品、アートまで 総出品点数約130点
KCIの豊かなコレクションより選ばれた、18世紀から現代までのさまざまな衣服74点と装飾品15点を中心に、アート作品約40点を加え、約130点の作品で構成します。
本展のための新作アート作品
個展やグループ展で注目されている原田裕規は、近年取り組んでいるハワイ在住の日系アメリカ人をモデルにしたデジタルヒューマンの映像作品《シャドーイング》を展示。そのほか本展の各章にアーティストたちの作品を展示します。

《シャドーイング(3つの自画像)》
2023年
撮影:Katsura Muramatsu
©Yuki Harada