日本の20世紀音楽は山田耕筰をもって開始されたといっても過言ではありません。
芸術歌曲創作の試み、『赤い鳥』をはじめとする芸術的童謡の提唱、新日本音楽運動、浅草オペラに象徴されるオペラやオペレッタ(喜劇的題材を用いた短いオペラ)の隆盛と流行歌へと広がります。音楽は青年層の広範な支持を得て、教育から芸術へ、娯楽へと多彩に展開しました。
第一次世界大戦とそれに続くロシア革命の影響は大正期の音楽界にも及びました。開戦を前にして帰国を余儀なくされた日本人留学生たちは国内で新しい音楽シーンを創出しました。また、戦後の混乱を逃れて極東を訪れた当代の名手たちは帝国劇場を舞台に本場の音楽を届け、若き作曲家プロコフィエフは渡米の途中に立ち寄った東京で自作を発表したのです。大正の音楽は若々しいエネルギーを湛えて私たちに迫ります。